LINE6 M9 Stompbox Modeler 購入後レビュー

前回の日記の通り、LINE6 M9 Stompbox Modelerを買ってしまった。せっかくの機会なのでインプレというか、使ってみた感想をレポートしておこうかと思う。

島村楽器ダイアリーの中の方、いつもありがとうございます。特にNova Systemは島村さんにしか置いていなかったので、助かりました。


LINE6 DL4 Delay ModelerをはじめとするStompbox系の機能を集合したペダル、M9 Stompbox Modeler(以下「M9」と略する)です。Stompbox系はカラフルなラインナップだったが、これは黒。

大きさの比較。ひとつのセクションはKORG PitchblackやMXRタイプと同程度の幅。


裏面の様子。STEREO IN/OUTとなっているが、当然モノラルでも出力可能。専用アダプタのDC IN、MIDIのIN/OUT、拡張ペダルの入力端子×2。ちなみに、トゥルー・バイパスかDSPバイパスを選択可能。
MIDIはバンクのバックアップ等にも使えるみたいです。EXPペダルは、外部にボリュームペダルを接続してボタンにボリュームペダルをアサインすることで、ボリュームペダルとして使ったりできるらしい。

【基本的な使い方】
各ボタン(2×3=6つ)それぞれにひとつのエフェクトを対応させて、それぞれON/OFFが可能。ただし、縦のふたつはどちらかひとつしかONにならないので(トグル式)、エフェクトは最大3つまで使用可能となる。使わないセクションはバイパスされる。

使用しているセクションはこのような形でLEDが点灯する。使用するエフェクトの系統によって色が変わる。
ディレイ:緑

モジュレーション:青

歪み&イコライザ:黄

フィルター:紫

リバーヴ:赤


→凡例については、ちゃんと本体に書いてあるという親切設計。地味だけど、こういう細かい仕事をしてくれると、ユーザーとしてはすごく助かる。使ってるうちに覚えるだろうけど。


最後にONにした部分の設定画面が右上のディスプレイに表示される。ここでも色とエフェクトの種類は対応している。ここでツマミを操作し、エフェクトの調整をする。左上のノブはプッシュ式で、押すことでカテゴリを変更、回すことでエフェクトのモデリングを変更できる。

さながら、2モードあるコンパクトエフェクターが3つ並んでいるかのような感覚で操作できる。他のマルチと違い、非常にわかりやすく、直感的に操作しやすい。
【各エフェクトの印象】

  • 歪み:やはりデジタル的な音というか、レスポンスの悪さやノイズが目立つ印象。ただ、DM4に標準搭載されていたノイズゲート機能がディストーションセクションに入っているため、ノイズの軽減は可能である。なお、各種モデリングによるコンプレッサー(MXR Dyna CompやBOSS CS-3等)やイコライザー(MXR 10band EQ等)が仲間入りしているので、地味に多用するセクションになりそうだ。
  • ディレイ・エコー:DL4そのままのクオリティを保っているが、数値でディレイタイムが見えるようになったのは地味に嬉しい変更点ではないだろうか。全体的に重めにかかるが、DL4よりは心なしかエフェクト音がクリアにかかるような……? デジタルディレイやエコーは綺麗になった印象。
  • モジュレーション:こちらもMM4のエフェクトをほぼそのまま継承しているらしい。あまり詳しくないので多くは語れないが、フランジャーフェイザー、コーラス、トレモロあたりは複数候補があって、キャラ付けも変わっているため、気に入った音を作るのに手間がかからないのでは。気に入った音が入っているかどうかは別だが。
  • フィルター:もう変な音が多すぎてひとつひとつ調べていくと日が暮れるぐらいにはいろんなフィルターがある。どう使うんだこれ、的なものが多い気がするけど、ニューウェーブシューゲイザーで使えそうな音がたくさん入っている。
  • バーブ:スタジオ向けエフェクターのEcho Park及びコンパクトペダルのVerbzillaからのセレクション。基本的なエフェクトを踏襲しつつ、細かい設定が可能。

ひとつ注意したいのが、各パラメータはデフォルトで12時の数値になっておらず、各々バラバラな設定になっている。特にモジュレーション系は掛かりが分かりやすいように派手な設定にしてあり、歪み系はDRIVEの設定がほぼMAXだったりOUTPUTが総じて高めだったりする。なお、一度変更したエフェクトの設定は、電源を切ってもセーブされている(初期設定)。
つまり、エフェクトを切り替えると途端にうるさくなる可能性が高い。操作する際は、あらかじめギターのボリュームを絞る等の対処をしておいたほうがいいかもしれない。
【ラッチ・モード】
当然、他のマルチエフェクター同様、作った音を記録して、即座に呼び出せる。他のマルチの場合はバンクセレクトをしなければならないが、このエフェクターであればワンタッチで最大6つまでの切り替えができる(フォルダが4つなので、合計24個まで設定がメモリ可能)。ワンタッチで切り替えるモードを「ラッチ・モード」という。

右のように、タップテンポスイッチとその隣のスイッチを押すと、ラッチ・モードに切り替わる。ライブ中に切り替えられなくもないが、幅がある程度空いているので、素早い操作が必要になるため、ちょっと難しいかもしれない。


ラッチ選択画面。各ボタンに設定をセーブしておくと、それを即座に呼び出せる。ちなみに、対応するスイッチを選びながら↑の同時押しを行うと、その設定画面に移ることができる。そこで設定を変更・セーブすれば、すぐに変更できる。これは非常に便利。ちなみに、セーブは上記の2ボタンを長押しして、「Save to……」という表示に切り替わった状態で、セーブしたいスイッチを押す。

普通のマルチエフェクターだと、バンクを多く使う場合は、切り替えがワンアクションでできないこともあり得る。その点、このエフェクターであればワンアクションで6バンクを変更できるため、よりライブ向けのエフェクターと言える。
【おまけ】

最近のマルチによくあるチューナー機能。例に漏れず付いているが、これがなかなかの性能。キャリブレーション機能を備えていて、チューナー起動時のミュート/バイパス切替ができるし、反応もかなり良いほう。視認性があまり良くないので、ライブでは使いづらいかもしれないけど、他のマルチに比べたら雲泥の差。マルチ付属の機能としては十分ではないだろうか。


チューナーは上部の中央+右を同時に押すことで起動できる。出るときも同様。左下のツマミでキャリブレーションをセットでき、右下のツマミでチューナー起動時のバイパス/ミュートを選択できる。

【総評】
かなり「遊べる」エフェクターである以上に、ライブで使いやすいエフェクター。特に、6つまでのバンクをワンタッチで変更可能なのは、実戦で非常に使いやすい。正直、導入に際してスイッチャーの使用を考えていたが、バイパス音もDL4よりは良く、そこまで気にする必要はなさそうだ。

  • エフェクトも歪み系以外はバリエーション豊富で実戦で使えるレベルだと思うし、その歪み系も、ジャンルに合うものをセッティングしていけばそこまで悪いものではない。イコライザやノイズゲートも実装されているので、プリアンプのように使うこともできる。
  • ただ、同時エフェクトが3つまでなので、歪み+ノイズゲートを使ってしまうと残りスロットはひとつとなってしまう。できれば、ノイズゲートは(DM4がそうであるように)別枠でON/OFFできるようなシステムが望ましかった。このエフェクターで歪みを作るのは、同時使用数を考えると勿体無い気もする。

基本的には外部歪みペダルとの併用を前提とした、レベルとイコライジングが調製できる空間系マルチとして使っていくのがよさそう。歪みモデリングはちょっとした補正や色づけ程度に使えるだけで十分有用だろう。
プロの使用頻度が高いLINE6 DL4だが、レベルの補正ができない・バイパス音劣化、というふたつの弱点を抱えている。この機種は、どちらの弱点も改善しているため、プロの足元がDL4からこの機種に切り替わっていくことも考えられる。今はEventide Timefactorのような良質ディレイも出てきているため、またLINE6を選ぶかどうかは分からないが……。
とにかく、おすすめです。ただ、音質にこだわる人はt.c.electronicのNova Systemを検討したほうがいいかもしれない。どちらも試してみてください。