ギター初心者用に「最初のセット」を考えてみる・2

この記事の続きです。





【4.エフェクター重要度:低
基本的に、ギターはアンプに繋げば音が出る。ただし、「ロックやりたい!でもこのアンプロックな音が鳴らない!なんで!?」ということはよくあるかもしれない。例えば、スタジオに行って下のアンプを使うことになった場合。

Roland ジャズ・コーラス JC-120B

Roland ジャズ・コーラス JC-120B

このアンプはどこのスタジオに行っても置いてある超有名アンプなのだが、ディストーションサウンドを作るのには非常にコツがいり、また激しい歪みを出すことはできない。要するに、ロックな音が出しづらい*1。スタジオに訴えて、このアンプ以外に交換してもらえればいいのだが、設備を動かせないスタジオもある。
そこで、エフェクターの出番となる。エフェクターは、ギターとアンプの間に繋いで、アンプの音に色付けをする役割を持っている。つまり、上記のアンプでもロックな音を出すことが可能なのだ。
「じゃあ、何を買えばいいの?」という話になる。今回は、「歪み系」――つまり、アンプから歪んだ派手な音を出すためのエフェクターを紹介する。歪み系はエフェクターの基本であり、いろいろな種類がある。ありすぎて好みが分かれるため、大きく3パターンに分けてお勧めを紹介する。

  • 余談だが、安いエフェクターを作っているBEHRINGERARIONはプラスチック筐体のため、耐久性に難がある。ダイキャスト製のDigitechやBOSSが品質的にも安定しているため、こちらを薦める。最近ではModtoneやNoar'sarkのエフェクターも評価が良いが、置いている店舗が少ない。

この中ではとにかくBOSSがお勧め。他の量産型コンパクト・エフェクターに比べて若干値が張るが、ツマミの位置が適当でもしっかりした音が出るのが強み。*2


<1.オーバードライブ>歪み方:
オーバードライブ(OverDrive)は(難しいことを省いて簡単に言うと)どちらかというと弱めの歪み方をするエフェクター。派手な音は出ないが、バンドのアンサンブルに溶け込みやすい。
[rakuten:soundwave:10001624:detail]
歪み方は弱いが、上級者にもユーザーが多い優秀なエフェクター。ギターソロや間奏の際に、音を大きくする用途(ブースター)としても使える。
[rakuten:gakkiwatanabe:10000425:detail]
これも歪み方は弱め。本当に弱め。癖がなく使いやすい割に安いので、予算がなければこれでいかがでしょう。ただし、本当に歪み方が弱いので、どれぐらい歪むのかを確かめてから買うべし。
<2.オーバードライブ/ディストーション歪み方:
ディストーションDistortion)とは、(簡単に言うと)強めの歪み方をするエフェクター。派手な音が出る分、弾いていて気持ちいい(人もいる)。ここでは、オーバードライブとディストーションの間程度の歪みを再現するエフェクターを紹介する。
[rakuten:soundwave:10001625:detail]
邦楽ロック界ではthee michelle gun elephantチバユウスケ氏を筆頭に、愛好者の非常に多いエフェクター。独特の枯れた音は他に類を見ない。
[rakuten:gakki-genki:10000514:detail]
上記モデルの模倣品のようなもの。少しでも値段を抑えるのであれば、こちらを。
<3.ディストーション歪み方:
[rakuten:soundwave:10001629:detail]
BOSSにディストーションは数あれど、汎用性が高いのはこのペダル。他のBOSS製品に比べて若干安いのも嬉しい。ツマミが多いが、音作りは意外と楽。

安さで選ぶなら、これも良品。通販限定なのが玉に瑕だが、非常に評価が高いペダルなので信用してよい。ただし、音作りは難しいので、慣れが必要。


なんにせよ、エフェクターが本当に必要なのかどうなのかはスタジオやメンバー、楽曲選択によりけり。必要かどうかをメンバーと相談してから検討しよう。初期装備として揃える必要はないので、重要度を「低」にした。



【5.アンプ】重要度:中
エレキギターはアンプを通じて音を出すため、アンプに繋いで練習したほうが練習効率が良い。「スタジオに行くまでアンプに繋がず練習して、いざスタジオで音を出すと、今まで気付かなかったミスに気付いた」なんてこともある。また、アンプに繋がないと確認しづらい奏法*3も出てくる場合があるため、自宅にアンプがあるに越したことはない。ただ、予算が厳しい場合は、先に切り捨ててもいいだろう。
自宅では、スタジオ規模のアンプを用意する必要は無い。とりあえず音が出ればOK、という考え方もなしではない。
[rakuten:soundwave:10001752:detail]
安い割に評判のいい自宅用アンプ。クリーントーンが綺麗。ただし、歪んだ音は苦手なので、物足りないかもしれない。ここまで買えれば御の字。ただ、ちょっと高い。


他にもPeavey Backstage2やPLAYTECH Jammer Jr.等、安いアンプは存在する。アンプはW(ワット)が出力の基準となるが、10〜20Wのものを買っておくとよいだろう。よく初心者セットについてくるのは5Wで、綺麗な音ではなく、つぶれた音が出てしまうことが多い。



【6.その他】重要度:高
他に最低限必要なものを書いておく。

  • ストラップ
    • 立って弾くなら必須。まず買わなければいけない、という認識で間違いないだろう。差し当たりナイロン素材のもの(¥500程度)でも問題ないが、切れてしまうことがよくある。合革製のものを選んでみると、長く使える。
  • ピック
    • まず必須と言って差支えない。ただし、品質にこだわる必要はあまりない。1個30〜100円で、違う形・厚さのものをいくつか買ってみて、自分にあった形や硬さを探す。そのうち、好きなメーカが見つかるだろう。*4
  • 弦(できれば)
    • 最初に張ってある弦がいつ切れるかわからない。念のため買っておいて、ギターケースのポケットに入れておこう。まぁ、切れてからでもなんとかならないことはない。
  • パッチケーブル
    • フロア型チューナーとエフェクターをどちらも使う場合は、それらを直列でつなげなければならないため、必要になってくる。基本的には、シールドと同等の値段のもの(あるいはそれ以上のもの)を選ぼう。

あると便利なものは色々あれど、最低限これだけもっていればバンドを始めることができる。



さて、ためしに上記の内容をSoundhouseで揃えてみよう。(通販サイトなので、実際に店頭で買うよりは安くなってしまうが。)

  • もうひとつ注意。特にギターは、通販で買わないように。かならず複数を手にとって、少しでも弾きやすいもの、握りやすいもの、しっくりくるもの(この辺は感覚)を選ぼう。箸よりも長い時間持つものなので、フィーリングを大事にしよう。

※フロア型チューナーを使用、エフェクター・アンプは購入しないことに。

  • ギター
    • FENDER JAPAN TL-STD(Vintage White):¥48,800
  • シールド
    • CANARE LC03(BLACK)×2:¥2,700
  • チューナー
    • KORG PitchBlack:¥5,180
  • ストラップ
    • Fender 099-0681-000:¥1,350
  • ピック
    • まぁなんでもいいや。合計¥500とします。



合計:¥58,530

アンプなし、エフェクターなしでこの値段。「えええ?こんな高いの?」と思ったかもしれない。確かに初期投資としてはかなり高い。でも、下のランクのものを格安で揃えるより、(長い目で見ると)かえって安くつくという現実がある。たとえ将来ギターに不満が出てきて買い換えることになっても、その他の物はそのまま使える。
本当に「長期的に見れば安い」のかどうかは、まだギターを買ったことが無い人からすれば、かなり疑わしいだろう。初心者セットは¥15,000程度あれば買えてしまうからだ。しかし、現実的にはその初心者セットのものは全て使わなくなる。(これは楽器経験者にしかわからないことだから、説得するのは非常に難しいが……。)




最初に書いたように、この記事はあくまでも「個人的見解」に過ぎない。

  • ただ、最近ベースを始めた後輩が、半年経たずして「新しいベース欲しいんですよね」と相談をよこしたことがある。彼はBUSKER'Sのベースを購入し、かなりの練習をしたようだが、その過程で「ベース自体の出音」に不満があったようだ。おそらくギターでも同じような経験をしたような人は、かなり多いのではないだろうか。

<決めるのは自分だ。気に入ってしまえばPhotogenicだって10年以上弾ける。ただ、Photogenicのギター「だけ」を10年以上触っている人は(少なくとも自分の知っている範囲では)いない。どこまでこの記事を信用するかは個々人の勝手で、バンドを3年以上続けて「このうそつきめ!」というのを筆者に突きつけてくれることを、心のどこかで期待している。その一方、そんな人が来ないだろうことも期待している。
何にせよ、よいギター・ライフを。

*1:スタジオによく置いてあるのはMarshall、Hughes&Kettner、Mesa Boogie、PeaveyFenderなど。これらのアンプであれば、エフェクターを用意する必要はぐっと低くなる。バンドの首謀者やリーダーに、エフェクターが必要かどうかを聞いてから検討しよう。

*2:BOSSのコンパクトエフェクターの出音は、「どれをとってもBOSSの音」と呼ばれることもある。通からすると「好みが分かれる」音であり、BOSSのエフェクターを意図的に避ける人も少なくない。これは、BOSSのコンパクトエフェクターが基本的にデジタル的な回路で構成されていることによるものである。

*3:具体的にはカッティング、ミュート、ブリッジミュート、ハーモニクス、ピックスクラッチ等。「なんのこっちゃい」と思うだろうが、特にミュートは頻繁に使用されるテクニックで、アンプがないと出音が確認しづらい。

*4:ちなみに筆者はGibson〜ESP〜History〜Jim Dunropと目まぐるしく変遷しつつ、未だに悩んでいる。